AIをまだ使っていない人ほど、これから伸びると思う

先日Facebookに、「これからAIで得をするのは、いまAIを使っていない人かもしれない」と書きました。
僕は毎日何時間も、多い日には10時間以上AIを使っています。そんな生活を2年以上続けてきたのに、最近よく考えるのは、僕のようにAIを使い続けてきた人よりも、いま自分の仕事にAIをほとんど使っていない人のほうが、これから一気に伸びるのではないか、ということです。
もちろん、AIを使っていないだけで自動的に仕事が良くなる、という話ではありません。
僕が思い浮かべているのは、一つの業界で長く仕事をしてきた人、お客様の反応をよく見てきた人、何度も失敗しながら自分なりの判断基準を持つようになった人です。
そういう人は、AIに詳しくないから遅れているのではありません。AIへ渡せるものを、すでにたくさん持っています。
長いプロンプトを書くことだけでは、差になりにくくなった
少し前まで、AIから良い答えを得るには、依頼文の書き方がかなり重要でした。役割を決め、手順を細かく書き、出力形式を指定し、例を何個も入れる。僕も、どう書けば思ったものに近づくかを何度も試してきました。
もちろん、依頼の仕方はいまも大切です。ただ、最近のClaude Fable 5やGPT-5.6 Solのような高性能なAIを使っていると、以前ほど複雑な書き方をしなくても、こちらの意図を汲んで仕事を進める場面が増えました。
「これを調べて」
「この資料を作って」
「このアイデアをページにして」
短い言葉から始めても、AIが必要な作業を考え、かなり良い初稿を作るようになっています。分からないことがあれば、AIの方から質問してもらうことだってできます。
OpenAIの現在の公式ガイドにも、GPT-5.6は文脈から利用者の目的を汲みやすくなり、すべての手順を細かく指定しなくてもよい場面が増えたとあります。一方で、仕事の背景、変えてはいけない条件、どこまで任せるか、何をもって完成とするかは、引き続き伝えるよう案内されています。
AnthropicもClaude Fable 5を、複雑で長時間にわたる知識労働やコーディングを進める高性能モデルとして紹介しています(2026年8月確認:OpenAIの現行モデル向けガイド、Claude Fable 5公式ページ)。
つまり、「長いプロンプトを書けること」だけを強みにするのは、以前より難しくなっています。高性能なAIを普通の言葉で使える人が増えれば、AIを操作できること自体では大きな差がつきません。
毎日AIを使ってきた僕にとっては、少し残酷にも感じる変化です。ただ、同時に、これまでAIを使ってこなかった人にとっては大きな機会だと思います。
AIだけで作った「それらしい答え」は、すぐに並ぶ
AIに材料をほとんど渡さず、サービスの案内文や企画を頼むと、まず返ってくるのは、多くの人が読んでも大きな違和感のない答えです。
文章はきれいです。見出しも並んでいます。企画には目的、対象、進め方が入り、資料もそれらしい形になります。最初の一歩としては、とても便利です。
でも、同じAIを誰でも使えるなら、その最初の答えだけで周りとの差を作るのは難しいでしょう。
AIは、あなたのお客様がどんな言葉に不安を感じるのかを、最初から知っているわけではありません。以前どんな提案がうまくいかなかったのかも、現場で何を省くとあとで困るのかも、こちらから伝えなければ分かりません。
ここで必要になるのが、その人が仕事の中で積み重ねてきたものです。
仕事を長くしてきた人は、AIに渡せるものが多い
たとえば、営業を長くしてきた人なら、お客様が質問を止めたときの空気や、提案書に書くと警戒される表現を知っているかもしれません。
お店を続けてきた人なら、常連のお客様が楽しみにしているものと、いくら告知しても反応が薄いものの違いを知っています。
製造や業務管理の現場にいる人なら、手順書には書かれていないけれど、ここを飛ばすとあとで大変なことになる、という順番を持っています。
この知識は、AIの操作方法とは別のところで身についたものです。お客様との会話、失敗した提案、何度も直した資料、現場で起きた問題の中にあります。
だから、AIに詳しい人がその業界のプロになる必要はありません。逆に、その業界のプロがAIのすべてを覚える必要もありません。
専門家が持っている経験と、AIの速さや幅を掛け合わせればいい。AIは何もないところから価値を作る魔法というより、すでに持っている能力を大きく使えるようにする道具だと、僕は考えています。
いまAIを使っていないことは、必ずしも大きな遅れではありません。強いエンジンを、まだ自分の仕事という名の車に搭載していないだけなのです。
まずは、一つの仕事で差を見てみる
AIを仕事に取り入れるために、最初から使い方を網羅する必要はありません。
今週、実際に作る予定のものを一つ選んでみてください。お客様への案内文、社内で使う資料、商品の説明、次の企画でも構いません。
最初は、普段どおり短く頼みます。
新しいサービスの案内文を作ってください。
返ってきた文章は、そのまま保存します。次に、長いプロンプトを調べるのではなく、自分の経験から三つだけ加えます。
- お客様から実際によく聞かれること
- 過去に使ってみて、自分の仕事には合わなかった表現
- 今回、読んだ人に一番分かってほしいこと
たとえば、次のように続けます。
お客様からは、申込み後に何を準備するのかをよく聞かれます。「誰でも簡単にできます」という表現は、僕のサービスには合いません。今回は、相談しながら内容を決められることを一番伝えたいです。この三点を反映して、もう一度書いてください。
二つの文章を比べると、AIの性能ではなく、自分が加えた経験によって何が変わるのかを見られます。ここで出てくる違いが、その人の仕事とAIを掛け合わせる最初の場所です。
実際のお客様の情報を使う場合は、名前や連絡先など、本人を特定できる内容をそのまま貼らず、仕事に必要な部分だけを残してください。
僕は、AIを使うことではなく、掛け合わせる仕事を増やしたい
これから僕は、AIを長時間使っていること自体を競うより、それぞれの領域で経験を積んできた人へ、AIの使い方を伝える仕事を増やしたいと思っています。
僕があなたの業界のプロになる必要はありません。あなたがAIの専門家になる必要もありません。
あなたが持っている専門知識、現場経験、判断基準と、僕が試してきたAIの使い方を組み合わせる。どちらか一方だけで考えるより、そのほうが大きな価値を作れます。
AIをまだ本格的に使っていない人は、遅れているのではなく、伸ばせるものをすでに持っているのかもしれません。
まずは今週の仕事を一つ選び、自分の経験を三つだけAIへ加えてみる。その前後で、返ってくるものがどう変わるかを見てみてください。
自分の仕事にAIを取り入れたい方へ
僕が提供している「オンライン実務パートナー」では、ChatGPTの使い方を説明するだけではなく、いまの業務を伺い、文章、資料、Web、作業手順など、どこにAIを取り入れると仕事が進むのかを一緒に考え、実際に使えるところまで進めます。