副業づくり事例 01今ある経験を副業にする
「ただの事務経験」だと思っていたことを、サービスにするまで
「副業には興味があります。でも、私の場合、何を仕事にすればいいのか分からなくて……」
今回ご紹介するのは、40代後半の女性です。
これまで20年ほど、会社で事務の仕事を続けてきました。
WordやExcelを使って資料を作ったり、請求書を処理したり、電話やメールに対応したり。新しい人が入ってくれば、仕事を教えることもあったそうです。
いわゆる「一般事務」と呼ばれる仕事ですね。
ご本人にこれまでの経験について聞いても、最初は、
「特別なことは何もしていません」
という答えでした。
20年も続けている仕事なので、自分にとっては当たり前なんですよね。
資料を作ることも、人に仕事を教えることも、「会社員なら普通にやることでしょう」という感覚です。
でも、副業を考えるとき、この「自分では普通だと思っていること」が意外と重要だったりします。
「事務ができます」だけでは、まだ副業にならない
もちろん、事務経験をそのまま使って、オンライン秘書や事務代行を始める方法もあります。
それも悪くありません。
ただ、今回はもう少し掘ってみることにしました。
これまでの仕事の中で、どんなことをよく頼まれていたのか。
何をしているときは、それほど苦にならなかったのか。
逆に、周りの人が面倒そうにしているのに、自分は普通にやっていたことはないか。
そんな話をしていると、
「人が作った資料を見やすく直すことは結構ありました」
という話が出てきました。
上司から、「これ、ちょっとまとめておいて」と渡された文章を整理したり、昔から使われている資料を読みやすく直したり。
新しく入った人に仕事を説明するときも、そのままでは分かりにくい部分を自分なりに整理して伝えていたそうです。
本人にとっては、これも普通の事務仕事です。
でも少し見方を変えると、
「情報を整理して、人に分かる形にする」
ことを長年やってきたとも言えます。
ここから、副業の候補を考えていきました。
経験だけではなく、「実際にお金が動いている仕事」に寄せてみる
ここで、僕が大事だと思っていることがあります。
持っている経験だけを眺めて、
「この経験なら、こんな副業ができそう」
と考えるだけでは、少し足りません。
その仕事を実際に必要としている人がいるか。
そこにお金を払っている人がいるか。
ここも一緒に見ます。
今回の場合、調べてみると、会社案内やサービス紹介、営業資料、セミナー資料などを外部の人に整えてもらう仕事は、実際にたくさんあります。
しかも、すべてをゼロから考えて作る仕事ばかりではありません。
「自分でPowerPointを作ったけれど、文字ばかりで見づらい」
「説明したい内容は決まっているので、もう少し人に見せられる資料にしたい」
「昔作った資料を、今のサービス内容に合わせて直したい」
そんな依頼もあります。
これなら、いきなり広告会社のような高度な企画力が必要なわけではありません。
20年間やってきた「文章を整理する」「分かりやすく並べる」「資料にまとめる」という経験を使いながら、足りない部分だけ勉強すればいい。
そこで、最初のサービスを考えました。
最初から「営業資料を作ります」にはしなかった
とはいえ、いきなり、
「売れる営業資料をゼロから作ります」
では、少し背伸びしすぎです。
営業やマーケティングの経験があるわけではありませんし、本人もそこまで自信はありません。
なので、最初はもっと今の自分に近いところから始めました。
「すでにある資料を、見やすく、伝わりやすく整える」
という仕事です。
依頼する側に、元になる資料や文章を用意してもらいます。
それを見ながら、文章の順番を変えたり、長すぎる部分を整理したり、見出しを付けたり、CanvaやPowerPointで見やすく整えていきます。
新しく覚えたのは、Canvaの使い方や、資料を見やすくするための基本的な考え方くらいです。
これなら、今までの経験とまったく関係のない仕事をゼロから始めるわけではありません。
本人も、
「これなら、今まで仕事でやってきたことの延長にありますね」
と感じられたようでした。
最初の仕事は、思った以上に時間がかかった
サービスを作ったあと、すぐに何件も仕事が入ったわけではありません。
まずは知人に話してみたり、自分ができることを文章にして見せたりしながら、少しずつ仕事につながる場所を探していきました。
そして最初に依頼されたのが、小さな事業をしている方のサービス説明資料でした。
資料自体はすでにありました。
ただ、文字がかなり多く、「これをお客さんに見せるのは少し恥ずかしいので、見やすくしてほしい」という依頼です。
文章の順番を変えて、1ページに詰め込まれていた内容を分けて、見出しを付けて、全体のデザインを整えました。
初めてなので、思っていたより時間がかかりました。
終わってから、
「この金額でこの時間をかけていたら、仕事としては厳しいですね」
という話にもなりました。
でも、僕はそれでいいと思っています。
最初の仕事は、売上以上に分かることがたくさんあります。
どんな資料を最初にもらえば作りやすいのか。
何回まで修正を受けるのか。
どこまで文章を直すのか。
自分はどの作業に一番時間がかかるのか。
実際に一度やってみると、次の商品をどう直せばいいかが急に具体的になります。
今は、月に何件か資料の仕事を受けるようになった
その後も少しずつ続け、現在は月に何件か、資料を整える仕事を受けています。
まだ副業だけで生活できるような金額ではありません。
本業を辞める予定もありません。
でも、最初に話していた、
「私には副業にできるものがない」
という状態からは、かなり変わりました。
今では、自分の経験を使って仕事を受け、実際にお金をいただいています。
そして面白いのは、仕事を始めてから次にやりたいことが見えてきたことです。
次は、「話を聞くところ」からできるようになりたい
今のサービスでは、基本的に元になる文章や資料をお客さんに用意してもらっています。
でも、何件か仕事をしていると、
「そもそも何を書けばいいのか分からない」
「サービスの説明をうまくまとめられない」
という相談も出てきました。
そこで今、少しずつ勉強しているのが、
「ヒアリングから営業資料やサービス説明資料を作る」
という仕事です。
例えば、小さな会社や個人事業主の方から話を聞きます。
どんな商品なのか。
どんな人に使ってほしいのか。
お客さんからよく何を聞かれるのか。
本人が一番伝えたいことは何なのか。
そういう話を聞いて、
「だったら、こういう順番で説明した方が分かりやすそうですね」
と整理し、資料にしていく。
ここまでできるようになれば、今よりも一段大きな仕事になります。
当然、料金の付け方も変わってくるでしょう。
ただ、これはまだこれからです。
今できている仕事を続けながら、少しずつ次の仕事に必要な力を身につけているところです。
僕は、副業ってこういう育て方でいいと思っています。
20年の事務経験が、そのまま商品になったわけではない
今回の話を、
「20年事務をやっていたから、資料制作の副業ができました」
とまとめてしまうと、少し違います。
最初は「一般事務」という大きな括りしかありませんでした。
そこから話を聞いていくうちに、
「資料を整理することをよく頼まれていた」
「人に説明することが多かった」
「情報を分かりやすくまとめるのは、それほど苦にならない」
という部分が見えてきました。
そして、それをそのまま仕事にするのではなく、
「その力を必要としている市場はどこにあるだろう」
と考えました。
そこで、実際に仕事として成立している資料制作という市場とつながった。
足りないCanvaや資料デザインの知識は、あとから覚えました。
僕は、この順番がすごく大事だと思っています。
持っている経験だけで無理やり副業を作る必要はありません。
反対に、「今これが儲かるらしい」という理由だけで、まったく経験のない仕事に飛び込む必要もありません。
今までやってきたことと、今お金を払って求められていること。
その間にある仕事を探してみる。
そこに、自分なりの副業が見つかることがあります。
小さく始めて、仕事をしながら育てていく
最初の商品は、
「すでにある資料を整える」
でした。
今は、それを月に何件か受けています。
次は、
「話を聞いて、資料の中身から一緒に考えられるようになる」
ことを目指しています。
この先、本当にそこまで行くかもしれませんし、仕事を続けているうちに、また別の方向が見つかるかもしれません。
それでも構わないと思います。
副業を始めるときに、5年後までの商品を決める必要はありません。
まず、今できるところから仕事にしてみる。
お客さんからお金をいただいてやってみる。
そこで分かったことをもとに、次の商品を考える。
そうやって少しずつ、自分の仕事を育てていけばいいと思っています。
僕が「副業づくりの時間」で一緒にやりたいのも、この部分です。
「何ができますか?」と聞いて、思いついた副業をいくつか提案して終わりではありません。
これまで何をしてきたのかを一緒に掘って、その中で使えそうな経験を探す。
その経験が、どこなら実際に求められているのかも考える。
方向が決まったら、サービスの内容を考えて、紹介文を書いて、必要ならページや資料まで一緒に作る。
そこまで形になって、初めて副業がスタートできるからです。
もし今、
「副業はやってみたいけれど、自分の経験がお金になるとは思えない」
と感じているなら、今の職種名だけで判断しなくてもいいと思います。
「事務」「営業」「接客」「子育て」「介護」
そんな大きな言葉の中には、何年も繰り返してきた小さな経験がたくさんあります。
その中のどれを取り出して、どの市場と組み合わせるか。
そこまで考えてみると、自分では想像していなかった仕事が見えてくることがあります。